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境港とその周辺は名建築・建造物の宝庫!
建築ワンダーランドへ出発

アクティブ 2022.12.02

境港市を中心とした近隣には、歴史的・文化的な価値の高い建築物がたくさんあります。ふと訪ねた建物が名建築家が手がけたものだったり、境港と半島をつなぐ橋が土木建築ファンから熱い視線を注がれていたり。そんな “建造物探訪”も境港観光の楽しみ方の一つです。そこで今回はカメラ片手に一度は訪れてみたい建造物を見て回る旅へ出発しました!

メタボリズム建築の集大成、建築家・菊竹清訓氏が手がけた『東光園』

「早速、境港市に建築探訪へ出発!」といきたいところですが、建築ファンならぜひ訪れたいのが、境港市に隣接する米子市の皆生温泉にある『東光園』です。JR米子駅から車で20分、「山陰の熱海」「米子の奥座敷」とも称される山陰屈指の温泉地にある老舗宿は、戦後の日本建築を代表する名建築として有名です。

庭園側外観。本館「天台」は2017年に国の有形文化財に登録された

静かな温泉街に突如現れる威容な建物。鉄筋コンクリートを使った豪快な造りは、まるで神殿のようで見るものを圧倒します。1964年に竣工した本館「天台」を手がけたのは、戦後日本の建築界に多大な影響を与えた※建築家・菊竹清訓(きくたけ・きよのり)氏。菊竹氏は同館のほか、山陰地方では島根県立美術館や旧島根県立博物館など様々な建物の設計を手掛け、その中でも同館は日本独自のモダニズム建築の頂点の一つと評されています。
※菊竹清訓(きくたけ・きよのり 1928~2011年) 福岡県久留米市出身。早稲田大学理工学部建築学科卒。1970年の大阪万博のランドマークだった「エキスポタワー」を設計した。75 年の沖縄国際海洋博では、メイン会場の「アクアポリス」を設計し、プロデューサーは漫画家の手塚治虫で、設計の菊竹とのコラボが話題になった。

道路側外観。複数の柱を束ねた組み柱が特徴的で上層階は宙に浮いているようにも見え,
2段ピロティになっているのがよくわかる
館内には建物の概要や菊竹氏の作品について解説したギャラリーもある

同館は6本の組柱が持ち上げた大梁(おおばり)から5•6階の客室を吊り下げるという大胆な構造で、世界でも唯一無二の建物。台湾のオペラハウスを設計したことでも著名な建築家・伊東豊雄氏が「世界の建築を含めて、自分の生涯の中で最もインパクトのあった建築」とも語っているほどです。

4階には空中庭園があり、建物の構造がよくわかる空間
上階からは大山なども一望でき、見晴らしも抜群!

館内に入れば、紫色のカーペットが敷かれたロビーに特徴的なイスが並べられ、その中央には上階を支える雄渾(ゆうこん)な柱が堂々と立ち、その存在感は神々しいほど。また、庭園の作庭は世界的彫刻家の流政之氏が手がけています。

1階のロビー。存在感のある組み柱はまるでアート作品のように映える
庭園は彫刻家の流政之氏が手がけたもの。滝と池とのダイナミックな構成が印象的

そんな国内外の建築ファンを魅了する東光園は、現在「建築ミュージアム化」を構想中。菊竹氏とゆかりのある建築家たちと協力し、客室を各建築家が監修するオリジナルルームや、建築に関する資料を展示する建築ギャラリーを展開する予定とか。世界でも唯一無二の建物を鑑賞しつつ、多角的に建築の楽しさに触れられる日が近々訪れそうですね!また、東光園は皆生温泉で唯一アルカリ泉質の温泉になり、美肌の湯としても人気。宿泊はもちろん、日帰り入浴なども実施されているので、ゆっくりと温泉に浸かった後に建築を楽しむのもおすすめです。

東光園
http://www.toukouen.com

『ホテルエリアワン境港マリーナ』も菊竹氏が手がけた建築

境港市の国道431号沿いにある『ホテルエリアワン境港マリーナ』も菊竹清訓氏が手がけたもの。まるで円柱の上に船が乗ったような独特の外観が印象的です。1985年の竣工で、現在も宿泊できるのは東光園とここのみになります。

独特のフォルムが目を引く『ホテルエリアワン境港マリーナ』
1階のフロントにある豪華なシャンデリアも必見

ホテルエリアワン境港マリーナ
https://www.hotel-areaone.com/sakaiminato/

急勾配のベタ踏み坂こと『江島大橋』は、構造建築も必見!

次に向かったのは軽自動車のテレビCMで一躍有名になった“ベタ踏み坂”こと『江島大橋』。境港市と島根県松江市を結び、中海に架かる巨大なこの橋は6.1%の急勾配のため、超望遠レンズで撮影するとまるでジェットコースターかスキーのジャンプ台のよう!そんな断崖絶壁な光景は、今ではインスタ映えスポットとしても有名です。

松江市側からの見た目はスゴいけど、車で走るといたってスムーズに登れます
超望遠レンズで撮影すると、まさに断崖絶壁!インスタ映え必至です

江島大橋の撮影スポットはこちらを参考に!

実はこの橋、スゴいのはその見た目だけじゃなく、橋の構造も必見です。何とPCラーメン構造の橋としては日本一の長さというから驚きです!

ここで閑話休題。ラーメンと聞くと食べるラーメンを思い浮かべますが、この橋はそれと全く関係なく、ドイツ語で「骨組み(Rahmen)」のこと。「ラーメン構造」とは橋脚と橋桁が一体となって力に耐える構造を意味します。また、「PC」はプレストレストコンクリートの略。つまり、PCラーメン構造を簡単に言えば“鉄筋コンクリート構造の桁橋”のこと。全長1.7km(橋梁部1446.2m)、水面から最も高い場所は高さ約45mを誇る江島大橋は、コンクリート製橋梁に限れば日本最長、さらに世界でも第3位に入るそう。ちなみに6.1%の急勾配になった理由は橋の下を5000トン級の船が往来できるよう設計したためだそうです。

そんな江島大橋は絶壁に見える角度からの写真が有名ですが、別の角度から眺めるのも一興。

境港市側から撮影。横からだと周囲に高い建物がないこともあって、ひと際長く見える

境港市側から橋を横に眺めると、その長さが一目瞭然で、下側からだと周辺に高い建物がないので、桁橋の下を通る船と比べると高さがよくわかります。いろいろな視点から江島大橋を楽しむのがおすすめです。

橋の中央部の桁下は33m以上の高さがあるため、下を通る船がこの小ささに!

構造美に注目したい『境水道大橋』

JR境港駅近くに到着したなら、足を伸ばして見てほしいのが『境水道大橋』。境港市と松江市の美保関とを結ぶこの橋は1972年に開通し、2022年に開通50周年を迎えました。境水道は幅が数百メートルしかないものの、昔は行き来するには渡船に頼るしかなく、地元の民謡『関の五本松』では「関と境に一本橋かけて一夜通いがしてみたい」とも歌われたとか。そんな夢の架け橋が実現したのが境水道大橋で、今では境港と美保関をつなぐ観光の架け橋にもなっています。

左右非対称のアーチ形状は全国的にも珍しいそうだ

実はこの橋、土木建築ファンから人気が高く、支持される理由はその構造美にあるのだとか。境水道大橋は橋長709mの3径間連続上中下路曲弦トラス橋で、トラス橋では国内9位の規模を誇ります(山陰では最大)。そして、両岸の地盤高に較差があることから橋の頂部が中央より大きく島根側に寄る“左右非対称”のアーチ形状という珍しいフォルムです。

美保関側から。トラス構造の美しさに注目

普通、アーチ形式の橋梁は通路を下から支える上路形式が多い中、境水道大橋は複雑化する橋の力学バランスを調整するため、トラス(三角形になるように棒材を両端で繋いだ構造を多数組み合わせたもの)が橋の中央に向かうにつれ、上路から中路、下路へと変化する“上中下路曲弦トラス形式”という特異な形状になっています。そのことから土木建築ファンからは「上路トラスから中路、下路と変化する構造形式が美しい」「曲弦トラスの描く優美なアーチと複雑に組み合わされたトラス構造が見応えアリ」などと支持されているそうです。
一見すれば普通の橋梁ですが、構造の視点から見てみると、いろんな発見があります。

最後は「みなとさかい交流館」を見学

最後は境港駅に隣接する『みなとさかい交流館』へ。ここは建築家・高松伸氏が設計した建物です。県内では伯耆町の「植田正治写真美術館」や島根県では松江市の「くにびきメッセ」なども設計を担当されています。

無機質でメタリックな外観が高松伸氏らしい建物。横に伸びるのは旅客船に乗り込むための通路

さかいみなと交流館は境港のランドマークとして1997年に竣工。外観は日本海の波と船団、風を受けるマストを表現したそうで、高松氏らしいメタリックな建築が近未来的な雰囲気を漂わせています。
また、さかいみなと交流館は隠岐汽船乗り場やお土産店、回転すし店などのほか、境港市観光案内所もあるので、ぜひ訪れてみてください!

境港周辺を少し散策しただけでも、見応えのある建築物が満載でした!カニをはじめとするグルメの旅はもちろん、境港観光のもう一つの目的として建築物探訪はかなり楽しめますよ。

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