神様に誘われて…境港から美保関までワンデイトリップ
伝統・歴史 2022.12.20
境水道の北側にある島根半島。その東端には“聖なる岬”とも呼ばれる港町・美保関があります。えびす様の総本社である美保神社や時間が止まったような小径(しょうけい)・青石畳通り、大正ロマン溢れる古建築の宿・美保館など、町全体が郷愁を覚える穏やかな雰囲気に包まれ、まるでタイムスリップしたような旅気分が味わえます。そんなのどかな港町までノスタルジック散歩に出かけました。
島根半島の東端にあるのどかな港町を目指して
境港市から県境の架け橋・境水道大橋を車で渡って、曲がりくねった道を走ること約15分。島根半島の東端にぽつんとあるのどかな港町が「美保関」(島根県松江市美保関町)です。
到着後、先に向かったのは半島の最東端に佇(たたず) む『美保関灯台』。白亜の壁に丸屋根という、絵本の世界にあるような愛らしいビジュアルながら、1898(明治31)年に建てられた山陰最古の石造りの灯台で、「世界の歴史的灯台100選」にも選ばれ、2022年には国の重要文化財にも指定された歴史ある灯台です。
灯台に隣接した旧宿舎は現在「美保関灯台ビュッフェ」に改築され、海を見ながら小休止できます。残念ながらこの日はお休みだったので展望デッキへ向かうと、目の前に広がるのは圧巻の海景色。この景色を眺めるだけでも、ここを訪れる価値は十分にあります。
境港市から美保関へのアクセスはバスもあり、JR境港駅からコミュニティバスで宇井渡船場バス停で乗り換え、再度コミュニティバスで美保関(美保神社)バス停へ。便数があまり多くないので、前もって時刻表を調べておくのがおすすめです。
ノスタルジックな青石畳通りを歴史さんぽ
再び美保関へと戻り、町を散策することに。島根半島の南側に位置し、美保湾を臨む美保関は漁業と海の玄関口として栄え、江戸時代は北前船の寄港地として50軒ほどの廻船問屋が集まるなど、たいそうな賑わいだったといいます。
そんな往時の姿を今に留めているのが、青石畳通り。細い路地の両側に昔ながらの建物が並び、家々の格子窓やレトロなガラス戸も懐かしく、ゆったりとスローな時間が流れています。
路地に敷かれた石畳は、北前船の物資の積み下ろし作業の効率化を目的に、海石を切り出して敷かれたもので、雨などに濡れると青く光ることからこの名がついたのだとか。そんな250mほどの短い小径はまるで時空旅行への滑走路のよう!一足ごとに歴史ロマンへの旅へ誘われます。
館内に入れば、大正ロマン溢れる空間が広がる『美保館』
そんな青石畳通りのシンボル的な存在が、老舗旅館『美保館』です。1905(明治38)年に建てられた本館は、営業中の旅館としては島根県で初めて国の登録有形文化財に認定されました。
明治の面影を残す本館は、木造2階建の数寄屋造り。一歩入ると、柔らかな陽射しが館内を優しく包み込み、まるで歴史ドラマのセットが目の前に現れたかのようです。
板張りの床は当初は吹き抜けの中庭で、昭和初期に改築され、同時期に天井部分がガラス張りになったことから、自然光がレトロモダンなインテリアを映し出し、和洋折衷の独特な空間を作り出しています。
2階から眺める館内はまるで和風アトリウム!欄間や階段の手摺り、建具など各部の意匠も凝っていて、見飽きることがありません。ちなみにこの吹き抜けの空間が人気アニメに出てくる鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の拠点である無限城を彷彿とさせると話題になっているのだとか。かつては伊藤博文や島崎藤村、高浜虚子など名だたる著名人が宿泊した由緒ある宿は、古き良き時代の息吹を感じさせながら、今も多くの人を魅了しています。
本館は今でも宿泊者の朝食会場として利用され、広間から縁側越しに美保湾を眺めながらの朝食という贅沢(ぜいたく)なひとときを楽しむことも。また、宿泊者以外でも日中の何も使っていない時間帯であれば、有料で内部を見学することもできます。
現在は本館への宿泊はできないものの、美保館では古民家再生に取り組んでおり、大正元年建造の古民家をリノベーションした「別邸 柘榴(ざくろ)」など4つの古民家の宿に宿泊することが可能に。美保関を訪れる楽しみがさらにアップしています。
『美保神社』で神様との出逢いを五感で感じる
美保館から徒歩数分、訪れたのが『美保神社』。ここはえびす様である事代主神(ことしろぬしのかみ)と母神の三穂津姫命(みほつひめのみこと)を御祭神に祭る、全国に3000社以上あるえびす神社の総本山です。
事代主神は古事記や日本書紀に記された出雲の国譲り神話において、大役を果たされた重要な神様。商売繁盛や海上安全、縁結びなど多くのご利益でも知られています。また、出雲大社の御祭神・大国主神(だいこく様)と美保神社の事代主神(えびす様)は出雲神話の国譲りを共に成し遂げた親子神であることから、古くから出雲大社と美保神社を「両参り」することで、一層大きなご利益が得られるとされています。
美保神社では毎日午前8時半から「朝御饌祭(あさみけさい)」、午後3時半から「夕御饌祭(ゆうみけさい)」という御祭神へご供物を奉る儀式が行われおり、「朝御饌祭」に参列することに。境内に足を踏み入れると、早朝でもあることから人影もまばらで、その静けさがより神聖な雰囲気を漂わせています。
8時半になると、太鼓の音ともに神職の方々が拝殿へと向かわれ、朝御饌の儀式が執り行われます。
祝詞があがった後は太鼓や笛などで神楽が奏でられ、厳かな雰囲気に包まれます。脈々と受け継がれてきた儀式を目の当たりにすると、いつしか背筋もピンと伸び、心身ともに清められていくよう。聖なる岬に立つ神社で、神様との出逢いを五感で感じられる新鮮な体験でした。
境港から少し足を伸ばしただけで得られる非日常な時間。ぜひ美保関で、時空旅行のようなひとときを味わってください。
■こちらもチェック!
こちらでも美保館の魅力をご紹介。
ぜひご一緒にお楽しみください!
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